その日、シャンドマルスアリーナの柔道会場には、信じがたい光景が広がっていた。東京オリンピックの金メダリスト、そして「無敵の女王」とまで称された阿部詩選手(24歳)が、まさかの2回戦敗退を喫し、2連覇の夢が儚くも消えてしまったのだ。
阿部詩選手は、世界ランキング1位のウズベキスタンのケルディオロ選手との対戦に臨んだ。試合序盤、彼女は内股で技ありを奪い、観客の期待を一身に背負っていた。しかし、その後の試合展開は誰も予想していなかった。終盤、谷落としで逆転一本負けを喫し、阿部選手は背中から畳に叩きつけられた。これにより、準々決勝への進出が絶たれ、彼女はメダルの可能性を完全に失ってしまった。
試合後、阿部詩選手は呆然とした表情で畳に座り込み、頭を抱えていた。彼女が畳を下りる際には、指導を務める平野雪英コーチの腕に倒れ込むようにして号泣し、その姿はあまりにも痛ましかった。会場を去る際には、観客から「詩コール」が湧き上がり、しかしその声援も彼女の心の痛みを和らげることはできなかった。
阿部選手は会場の取材エリアに到着したが、JOCの広報担当者が「今は取材を受けられる状態ではありません」と説明し、彼女の精神的ショックの大きさを物語った。関係者によると、試合後に過呼吸を発症し、周囲が懸命にサポートしていたという。
阿部詩選手が2回戦で強敵と対戦することになった背景には、オリンピックの抽選結果があった。昨年10月の国際大会を欠場した影響で、阿部選手は今回の大会でのシード権を逃してしまった。そのため、彼女は世界ランク1位の選手と2回戦での対戦を余儀なくされたのだ。阿部選手自身は「どこに入っても勝たなければ金メダルはない」と意に介していなかったが、今回の結果はその考えを覆すものとなった。
阿部選手は初戦でカナダのケリー・デブチ選手と対戦し、開始わずか57秒で大外刈りを決めて一本勝ちしていた。この試合での審判は、前日に男子60キロ級で永山竜児選手が不可解な判定に苦しんだ審判だったが、特に問題なく勝利を収めた。
しかし、続く2回戦では、技ありを奪いながらも逆転負けを喫するという悲劇的な結果となった。
阿部詩選手は、昨年の世界選手権で2連覇を果たし、東京オリンピック後も無敗を誇っていた。そのため、パリの畳に立つ彼女はまさに「無敵の女王」として期待されていた。しかし、五輪の魔物が彼女の夢を奪ってしまった。
東京五輪後、両肩の手術を受け、復帰した阿部選手は、技術的にも精神的にも大きな成長を遂げていた。しかし、その成長も、オリンピックという大舞台では十分ではなかった。敗戦の約40分後、兄である阿部一二三選手が2回戦に挑んだ。兄妹での連覇を目指していたが、その夢は阿部詩選手の敗退で消えてしまった。
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