2024年8月2日、パリ五輪陸上競技の2日目に行われた女子5000メートル予選。日本記録保持者の田中希実選手が出場したこのレースで、田中選手は決勝進出を果たせず、予選敗退という厳しい結果に終わりました。この予選敗退は、彼女の精神状態にも大きな影響を与え、さらには父親でありコーチでもある田中勝人さんの悪い予感が的中する形となりました。田中選手の心情とその背景に迫ります。

パリ五輪での挑戦

田中希実選手は、世界陸上ブダペスト大会で8位に入賞し、14分29秒18の日本記録をマークするなど、目覚ましい進化を見せていました。彼女はパリ五輪で1500メートルと5000メートルの二種目での決勝進出、さらには入賞を目指していました。

しかし、5000メートルの予選では、15分00秒62の9位に終わり、決勝進出ラインの8位以内には僅かに届かず、予選敗退となりました。

厳しいレース展開

女子5000メートル予選第一組には、世界記録保持者のエチオピアのレテセンベト・ギデイ、オランダのサファン・ハッサン、二大会連続金メダリストのフェイス・キピエゴンといった強豪選手が出場していました。田中選手はレース序盤から集団の前方につき、スローペースで進む中、山本選手が一気に飛び出す展開となりました。田中選手は第二集団の12番手で追走し、トップ集団が山本選手を追い抜く形で進行しました。しかし、ラスト一周でアフリカ勢がスパートをかけ、田中選手は遅れを取り、9着でフィニッシュしました。

父親の予感とその影響

田中希実選手の父親でありコーチでもある田中勝人さんは、彼女の精神状態を常に気にかけていました。

東京オリンピックでの初入賞以降、田中選手は挑戦者から追われる立場になり、そのプレッシャーは年々増していきました。特に、この1、2年は肉体的に整っていても、精神的な不安がレースに影響を与えることが多くなっていました。

プロ転向後初の試合である金栗記念選抜陸上中長距離大会でも、田中選手は思ったような結果を出せず、周囲の期待と自身の不安との間で苦しむ様子が見られました。この時、田中勝人さんは「今回はまずくなりそうだ」と薄々予感していたそうです。

田中選手の心の葛藤

田中選手は、プロ転向後、古巣を離れることや周囲の期待に応えるプレッシャーに直面し、その精神的負担は大きなものでした。

彼女は自分自身を見失い、周囲が求める「田中希実選手像」を演じることに苦しんでいました。その結果、自分の本来の力を発揮できず、レースでも不本意な結果が続いていました。

新たな挑戦と前向きなコメント

それでも、田中選手は前向きなコメントを残しています。「今日がダメだった分、全部出し切るレースがしたいです」と語り、次のレースに向けて気持ちを切り替えようとしています。また、彼女のメンタルをサポートするために、新たなチームスタッフを配置したり、他チームの選手とトレーニングする機会を設けたりと、様々な試みが行われています。